劇カラ通信



ポン出し

ポン出しとは何か?ポン酢と似ていますが調味料ではありません。だって「だし」の表記も「出し」であって決して「出汁」ではありません。もちろんお祭りに見られる「山車」でもありません。

「ポン出し」とは音響用語のひとつで、効果音や音楽をタイミング良く鳴らすことです。最近ではサンプラーやMD、CDなど、古くはカセットテープ、オープンリールテープをメディアに音響さんが再生スイッチを「ポン」と押して音を「出し」ていたので「ポン出し」です。

現在もっとも手軽で音質も良いポン出し向けの機材はサンプラーでしょう。いや、ナンプラー(魚醤)でもありません。だってあっちはむしろ「ナムプラー」です。サンプラーとは、音声信号(この場合電気信号に変換されたものですが)をPCM変換しメモリーに記録するデジタル音響機材です。最近では部品類が非常に安価になってきたおかげで、コンパクトで操作子も多様になり低価格化が進みました。楽器の音を取り込めばそのままその楽器の代用になるので、発祥当時は鍵盤が付いていてシンセサイザーなどの電子鍵盤楽器と同様の使われ方が多かったものです(かつ高価だった…)。その後MIDI制御による音源とコントローラーのコンポーネント化の波をモロに被りモジュール化が進みましたが、クラブムーヴメントの台頭によってDJという職業が爆発的に増加し、そのパフォーマンスのための強力な道具としてさらに変化を遂げました。

最近では再生スイッチが10個くらい並んだ四角い弁当箱のような筐体のものが多数各社からリリースされています。価格も数万円から。80年代初頭には考えられなかった事態です。

延々と何を書いているのかと思われる方も多いかと思いますが、この「ポン出し」とそれに必要な機材、演劇の公演にはかなり重要なのです。例えば「電話が鳴る場面」があったとします。あるセリフの特定のタイミングで「ピロピロピロ」などと電話の着信音を鳴らす場合、非常にシビアなタイミングが求められます(どうでも良いことですが、「シビア」って便利な言葉ですね)。さらに役者が電話を取る演技のタイミングに合わせてその音を止めなくてはなりません。その「電話が鳴る場面」の設定が屋外で、例えば「工事現場のすぐ脇でとても騒々しい場所」だったりすると(どんな芝居じゃ、と言う感じですが)、工事現場の効果音も同時に鳴らしていなければなりません。こういうことをオープンリールテープで出していた先駆者の方々には敬意を表する必要があります。

また脱線してしまいましたが、10-BOXにはサンプラーという機材がありません。現在保有している機材で一番便利なのがMDでしょう。サンプラーを貸し出し備品として備え付けている小屋(舞台用語で劇場の意味)は滅多に無いと思いますが(理由は想像してください)、あったら便利かなぁ、と夢想する今日この頃。まぁ実際のところデリケートな操作を要求されるので、結局自分の使い慣れている機材が良いということで備え付けても誰も使わないのではないだろうか、と思うのですが。

10-BOX(服)

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